モーニングの白襟
モーニングドレスのウエストコート(ベスト)に付ける「白襟」。
襟とはいえど、ウエストコート本体に「取り付ける」付属品であり、いわゆるカラーやラペルとは異なる。
よく「白襟は着物の半衿からヒントを得て、日本で考案されたものです」などという説明を見かけるが、とんだ誤りである。
下の画像のように、フロックコートの時代から、欧米の紳士たちが着用している。
国王ジョージ5世。
この画像は、かの有名なアインシュタイン博士である。
チャールズ皇太子もよく着用されている。
日本では「黒のベストを弔事と区別するために着ける」などと言われるが、上の写真のチャールズ皇太子はグレーのウエストコートにも白襟を着用されているし、そもそも必須アイテムというわけではない。
白襟は18世紀頃から19世紀初頭の、ウエストコートの下にもう1着、ウエストコート(白とは限らなかったらしい)を着込んでいたことの名残と考えられる。
それは、防寒のためだったり、ウエストコートの染料がシャツにつかないようにするなどといった実用的な機能のほか、おしゃれアイテムの役割も持っていたようだ。
下の写真の左側が中に着込むスリップベスト、右側がその上からもう1枚重ね着した状態である。
重ね着した上着の胸元から襟にかけてわずかに見える赤が、さりげないおしゃれである。
上着を着れば、着込んだスリップベストはほとんど隠れてしまうため、外から見えない脇腹部分は色がついていない。
見える部分だけを加工するというこの考え方は、上着から見える胸部分だけが糊で固められた、いわゆるイカ胸シャツに通じるものがある。
上着としてのスリップベストが、装身具としての白襟になったのは、おそらく現代のモーニングコートとほぼ同じような上着が登場した19世紀後半頃と思われる。
かつては、普段着のスーツのウエストコートに白襟が着けれることもあったらしい。
(下の画像の右の紳士は、三揃いのスーツというより、ディレクターズスーツことブラックラウンジスーツのように見える)
白襟には、最初に載せた写真のように、2組の白襟を左右につけるタイプのほか、下の画像のように1枚に繋がっているものもある。
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