クレリックの話


「クレリックシャツ」とか「クレリックカラー」というのを聞いたことがあるかもしれない。

クレリック(Cleric)は「聖職者」という意味である。

欧米にも、名前が似ているClerical collar(クレリカルカラー)というシャツのカラーがある。

クレリカル(Clerical)というのは、「聖職者の」という意味である。

名前は似ているものの、日本のクレリックカラーと、欧米のクレリカルカラーは全く異なる。

まず、日本で「クレリックシャツ」と呼ばれているシャツは、カラー(襟)とカフス(袖口)が白で、身頃の部分に色や柄が入っているシャツで、そのシャツの白いカラーをクレリックカラーと呼んでいる。

これは、取り外し式のカラーやカフスがまだ多かったWW1前後頃、身頃に水色などの色物や、ストライプなどの柄が入ったものに、白いカラーやカフスを取り付けることが流行したものの名残である。

下の画像が、カラーが付いていないシャツである。

この画像のシャツにはカフスが始めから付いているが、カフスも付いていない(=取り付け式カフスを装着する必要がある)ものもある。

下は、取り外し式カラーとカフスのカタログである。
(余談ではあるが、このことからも、カフリンクスの和製英語である「カフスボタン」を「カフス」と省略することは根本的な誤りであることがわかる)

さて、上の画像のような、いわゆる「バンドカラー」は、カラーが付いていない状態のシャツで、明治時代の書生などは、カラーが汚れたら洗濯して毎日付け替える、などという経済的な余裕はなかったため、カラーなしのバンドカラーの状態でシャツを着ていたらしい。

もちろん、このままでは一人前のシャツとは認められないので、カラーを取り付ける。すると下の画像のようになる。


これが「クレリックシャツ」の原型である。
さて、話はクレリカルカラーに移るが、下の画像の首元の白い部分、これが欧米の「クレリカルカラー」である。

「クレリックカラー」とは全く異なる。

下の画像の、クレリカルカラーを着用している男性が着ている黒い服は、カトリックや聖公会の聖職者が着るCassock(キャソック)と呼ばれる、丈が足首や膝まであるフロックコートのような、立襟の上着である。

下の古いカタログでは、キャソック(左から4番目)をClerical(クレリカル)と表記している。

立襟は、かの毛沢東が着用していたために「マオカラー」などとも呼ばれ、インドなどでは昔から根強い人気がある。

詰襟の学ランもそうであるように、立襟のジャケットは、タイをしないのが普通である。

また、クレリカルカラーは下の画像のように、首の後ろで留める仕組みになっているのも特徴である。
最後になったが、日本でいう「クレリックカラーシャツ」は、英語ではContrast collar shirt (コントラスト=対照的な) などと呼ばれる。

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