葬儀用のポケットチーフとは?
日本では「ポケットチーフは晴れの日のおしゃれアイテムなので、葬儀では非常識」とされるが、それは勝手に生みだされた、根拠のないルールであることは前回述べた通りである。
ポケットスクウェアは、実用のハンカチーフを胸に挿していたものが後に単なる飾りとして残ったもので、普段のラウンジスーツから冠婚葬祭の正礼装まで、いつでも挿されていた。
今も、フィリップ王配は普段から冠婚葬祭まで、スクウェアに折ったハンカチーフを挿されている。
殿下は葬儀でも、黒っぽいスーツに黒のタイに、白のハンカチーフをこの折り方で挿されていた。
参列者のある紳士は、白のハンカチーフを三角に折ったものを、ストライプ柄の暗めのネイビーのスーツに合わせていた。
おしゃれなチャールズ皇太子は、柄物のポケットスクウェアを折らずに自然に挿す、いわゆるパフ挿しがお好きなようで、葬儀の際にも白地に黒の柄入りというシンプルかつおしゃれなハンカチーフを挿していた。
華美すぎず、かといってシンプルすぎず、暗くどんよりした印象も感じられない。
それでも、哀悼の意はしっかり感じられる。
これは、現代の日本の葬儀にもぴったりな気がするのは私だけだろうか。
もちろん、日本には死を穢れとして忌むという考え方があるし、そもそも文化が違うのでは?と思われるかもしれない。
確かにそうではあるが、欧米においても、死は辛く悲しいものである。
ド派手な服装は日本と同様、間違いなく非難の対象になるだろう。
嘘か真か、ヴィクトリア女王(1819-1901)は夫であったアルバート王配(1819-1861)の没後40年もの間、黒の喪服だけで過ごされたと伝えられている。
自身のみならず、女王に謁見する婦人にも推奨したアクセサリーはジェット(樹木が化石化したもの。その色から黒玉とも)でできたもののみという徹底ぶりだ。
そんな厳格な女王が治めていた国でも、今日では葬儀では濃い黒の礼装しか認められない、なんてことはない。
もちろんポケットスクウェアも非礼とはされない。
ポケットスクウェアは、礼装を完成させるためのアイテム、例えるならば「ケーキの上のロウソク」のような存在だ。
なくても困らないが、やはりあったほうがより良くなるのだ。
だからと言って葬儀にスリーピークスに折った白のハンカチーフを挿していけば、非難の対象になること間違いなしだ。
ではどうするか。
簡単である。
ハンカチーフを使った後、胸に挿すのだ。
リネン製の、濃いめのグレーやネイビーなどのハンカチーフなら悪目立ちしないだろう。
それを、汗を拭ったり涙を拭いた後で、さりげなく胸に挿すのだ。
きちんと折ってしまうといかにもポケットスクウェアを意識した感じになるので、自然にクシャっと挿すのだ。
そうすれば「おしゃれアイテムとしてハンカチーフを挿している」のではなく、周りからは「ただハンカチーフを胸ポケットに挿しているだけ」と見なされるだろう。
これなら「葬儀にポケットチーフはマナー違反」と頑なに信じる人々からの非難にも対応できるだろうし、本来の礼装の意義にも沿っている。
とはいえ別に挿さなくても非礼とはされないので、そこまでして挿す必要と言われればそうなのだか。
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