スーツとは

Suitという単語は、「一組の」という意味を持ち、転じて「同じ布地で拵えた揃いの服」という意味になった。

つまり、黒のジャケットにグレーのトラウザーズ(ズボン)のような、いわゆるジャケパンスタイルは、原義に基づくと厳密にはスーツとは言えない。

現在もスーツは、ジャケットとトラウザーズ、3ピースならばウエストコート(ベスト)も同じ色と素材の布で作られる。

また、今では滅多に聞かないが、スーツを表す単語としてDittosという単語が使われたこともあった。Dittoは会話中で’Me too’のような使われ方もするが、文中では「同上」という、重複を避ける時の決まり文句としても使われる。

- 下も上も同じ- これはまさにスーツの構成である。

日中の正礼装であるモーニングは、黒のジャケットと共地または別素材の黒やその他の色のウエストコート、原則としてグレーの縞模様のトラウザーズという構成であり、3ピースの全てが同じ色と素材の布で作られることは基本的にない。そのため、モーニングはスーツではない。
(とはいうものの、モーニングの章で述べるグレーモーニングは例外的に共地の三つ揃いである。そのためか、英語でもMorning suitなどという用法がしばしば見られる)

夜間の正礼装である燕尾服(ホワイトタイ)も、白いピケ織り(浮き出し織り)のウエストコートを着用するので、スーツではない。

ただ、黒のボウタイ(蝶タイ)をする、夜間の準礼装であるディナージャケット(タキシードの英国における名称)は、上着とトラウザーズ、今では略式の黒のカマーバンドが一般的だが、戦前は黒のウエストコートを着ていたため、3つ揃いのスーツだったかもしれない。

実際、ディナージャケットにイヴニングドレススーツ(Evening dress suit)と書いてある19世紀の紳士服カタログを見たことがある。

結論として「スーツ」は原則として3ピースまたは略式の2ピースの共地のものを指すが、例外的にブラックラウンジスーツ(日本ではディレクターズスーツと呼ばれる)などのような特殊なスタイルも広義ではスーツと呼ぶ。
紳士服ガイド 〜スーツから礼装まで〜

紳士服ガイド 〜スーツから礼装まで〜

- あなたは、紳士服量販店や貸衣装屋がまことしやかに語る「古い常識・誤った着こなしルール」に騙されていないだろうか - 毎日のスーツから冠婚葬祭の礼装まで、伝統を守りつつ時代に見合ったアレンジを加えつづける英国王室に倣った、従来とは一味違った着こなしを提案。 これを読まずに紳士服は語れない。

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